にじ380号

今年の主な行事が無事終了しました

9月3日の交流会、10月13日の小旅行、11月11日のバザーと続いた、この秋の行事がすべて無事に終了しました。
バザーは、皆さまのご協力により、バラエティに富んだ品々が揃い、大変多くの方に足を運んでいただきました。心より感謝申し上げます。売り上げは、会の活動に有効に活用させていただきます。
小旅行は、百点満点の天気に恵まれました。相馬市伝承鎮魂記念館を訪れた後、すぐ前の穏やかな海の空気を感じながら、ゆっくりと語り合ったり、砂浜を散策したり、素足になって波と戯れたり、それぞれに秋を満喫しました。
小旅行の感想をいただきましたのでご紹介します。

福島市 鈴木邦代さん
この海が数多の人を飲んだのか
今日はやさしい群青の波

福島市 小野祥一郎さん
にじの会の小旅行は夢のようです。被災されたところに向かうことは、わかっているはずですが、バスの中はどう考えても、みなさん楽しそうでした。
ガイドいただいた方のお誘いで、記念館に入るまでの待ち時間に、砂浜におりました。靴と靴下を脱いで、すそを膝までまくりました。渚に入るといろいろに波が寄せてきました。まったく同じ当たり方をする波はないものですね。32年ぶりに、波に足をあらわれる気持ちよさを味わいました。
今年5月に南相馬にきたとき、「菜の花迷路」を作っている上野さんが「たくさんおいでになってにぎやかに楽しくしていただくと、空でみている人たちが喜ぶんです」と話されていたことを思いだしました。
昼食にいただいた「たこ八」の刺身はどれもたいへんおいしくて、やっぱり浜だなと感じました。佃煮もなかなかでしたのでおみやげに買いました。
夕食は、「浜の駅」で買った、ひらめの刺身をつまみに、おいしくお酒をいただきながら、地震の揺れと断水、津波のすごさと除染作業のご苦労を思いました。
そして、幸運にも孫が7人になった夢のようなこの12年を振り返りました。ありがとうございました。
私とにじの会
無知という恐怖
会津美里町 坂下嘉博
昭和30年代のことです。人間が生まれてその後、個性や人格が作り上げられて行くための知識や学問、その90パーセントは視覚を通して得られるという学説が社会科学の分野で広く伝えられるようになりました。「そんなものかな、そんなものなのだろうな」とぼんやりと話を聞いていました。しかし繰り返し繰り返し考えるうちに何ともおぞましい思いにとらわれるようになりました。生まれながらにして、あるいは生まれてまもなく光を失い、視覚を通しての社会との関わりをたたれた者たちは、二親・家族・周囲の大人たちの仕草や表情を見ることにより会得して行くべき人としての情操や世間知を完全に断たれます。個性や人格の形成にゆがみを来すことがあっても当然ではないのか。「世間知らず、常識が無い、人の迷惑を考えない・・・」などと言われる例を私たちは歴史の流れの中で数多く見てきました。
この10年、人権が強調される時代となり、これらの言葉を聞くこともなくなってきました。しかし実情は思わず顔を背けたくなることや、その場にいたたまれなくなるようなこと・・・それらの言いしれぬわだかまりから解放されえないのです。
「盲教育と充実した点字による読書環境の構築こそが、盲人が一人の独立した社会人として自立して行く上での礎となります」。日本の視覚障害者の大先達として歩み続けた本間一夫は、昭和の初期、日本点字図書館を創立するに当たり、決然として言い放ちました。
明治時代、近代化を目的として新政府は富国強兵とともに義務教育制度を確立しました。福沢諭吉の「一身独立して一国独立す」との教えは多くの国民に共有されてゆきました。全国に初等教育から高等教育までの学校が次々と設けられてゆきました。その中で、点字を用いた盲教育も同じように推進されて行きました。ここで一言付言して置くべき事柄があります。これらの充実した教育制度は、後に外地と呼ばれた朝鮮・台湾・満州においても力強く進められたのです。
そして、学び舎を巣立った多くの盲人たちの教養・文化を支える点字図書館の存在。その根源として、社会教育家・後藤(ごとう)静香(せいこう)の存在こそが、本間一夫の熱意を力強く支え、今に至る点訳奉仕という社会活動へと結実していったと言われます。
昭和30年代、少年時代の坂下も多くの善意の人たちにより点訳していただいた書物を毎日夢中になり読みふけったことを今でも鮮やかに覚えています。
そして国の政策として全国全ての都道府県に設立された点字図書館。さらには福島県内にもボランティアによる「にじの会」が組織され、視覚障害者の読書環境はもとより、日常生活に及ぶきめ細やかな支援が今に至るまで継続されてきました。その傑出した活動内容は全国的にも高く評価されていることは多くの人がご存じの通りです。
毎月お送りいただいています会報「にじ」を読ませていただいているうちに、坂下の中に微かにいたずら心がうずき始めました。毎日読みふけっています点訳図書・朗読図書の読後感を勝手気ままな感想を会報編集部宛に送ってみるべえか!いやいや、まてまて!「百年早い」とひっぱたかれるか。
それでもおそるおそる原稿を送ってみました。心配は杞憂に終わりました!「好きなように書いて送ってみなさい」との寛容なお返事。それならばと、毎月1冊、面白そうなもの、いささか気になったものなどを選んでは勝手気ままに書き散らかしては投稿させていただきました。10年にはなったでしょうか。さすがに70歳を過ぎたころから、心身の衰えは甚だしく、認知症の家族との生活にも疲れ果て「ごめんなさい」との連絡を差し上げました。編集担当者からもご理解をいただきまして引退させていただきました。
この数十年、視覚障害者の読書環境も多くの善意の人たちにより支えられ、当初想像もできなかった劇的な変容を遂げてきました。それならば、その読書環境は、一般社会と同じように芳醇なものとなり、血潮を沸き立たせ、めくるめくような知の世界が私たちの前に構築されたといえるのでしょうか。
勇をふるってあえて申し上げます。
否です。断じて否です。
ガサガサという新聞をめくる音、あそこにはどのようなことが書かれているのか。ぶ厚い活字書を開いて、そっと指を這わせてみる。それで、何がわかるわけでもなし。机の上に転がっている鉛筆やペンをそっと手にしてみる。それで、何がどうなるわけでもなし。身の内で荒れ狂う何ものとも知れぬ感情、奥歯でかみ殺したこと、数知れず。
最後に、令和5年上期第169回芥川賞についてご紹介し本稿を閉じます。
車いす使用、重度身体障害がある市川沙央さん
(43歳)が自身と同じ難病を患う主人公を描いた小説「ハンチバック」。
「私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモを憎んでいた。その特権性に気づかない『本好き』たちの無知な傲慢さを憎んでいた」
当日の記者会見場での発言。
「一番訴えたいことは、『読書バリアフリー』が進むこと」すべての人が自由に本が読める環境を整備する「読書バリアフリー」。
読書が困難なのは障害を抱える人々だけではない。加齢による衰えもあり、だれもが直面するかもしれない課題だ。今を代表する選考委員の面々、そして全ての出版業界に関わる人々、これをいかに聞いたか、作品を読んだか。

短歌・俳句・川柳

菅野康男さん(福島市)
秋風が財布かすめる物価高

薄井セツ子さん(福島市)
この体取扱いに要注意

穴澤勲さん(会津若松市)
血圧を朝晩測り記録する
いつまでやれる健康管理

矢島秀子さん(南相馬市)
二つ三つ寝息聞こゆる湯の宿に
悩みを流し明日を生きる

小板橋順二さん(猪苗代町)
ボケ頭スマホ使えずレクチャー受く
明快操作に夢の一歩を

清野隆一さん(郡山市)
鯛焼きが冬だ出番とつぶやいた
「それは昔よ!今は年中!」

三浦寛さん(国見町)
思い出は海浜学校枕投げ
年齢は変われど潮騒変わらず

谷田川正さん(郡山市)
柿のれん今年は百個干しました
白粉をふいてやがて美味しく

JRPSからのおしらせ
JRPS福島の新年会を行います。
日時:令和6年1月14日(日)12時?14時
会場:岩代家敷大王
集合:11時15分福島駅西口ゲームセンター前
(11時30分に無料送迎バスが出ます)
参加費:飲み放題込5,000円(非会員5,500円)
申込み締切:令和5年12月20日(水)
申込み、問い合わせ:090-7931-5984
メール miura_164@docomo.ne.jp(三浦寛さん)
スコップ三味線演奏やお楽しみ抽選会があります。皆さんのご参加をお待ちしています

お問い合わせ先

特定非営利活動法人にじの会


〒960-8074
福島市西中央2丁目23-1
TEL:024-529-7021
FAX:024-529-7031

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