にじ298号
にじの会では、小中学校の総合的な学習や福祉についての学習の時間に、依頼があれば必ずボランティア数名で伺い、できるだけ多くの方に点字やガイドについて知っていただく活動をしています。
11月には大森小学校で150名以上の5年生に体験していただきました。全員の感想をいただいたのですが、数名の方の文を抜粋してご紹介します。
「ガイドになったとき、どのタイミングで階段の手すりを持たせればいいのか分からなくて、ガイドはとても大変な仕事だと思いました。でも意外だったのは手をつないで歩くかと思っていたけれど、ひじの上を持つことが予想外でした。点字体験では、点字を読むのと書く方向がちがうのでとてもびっくりしました。一マスに6個も穴をあけられることを初めて知りました。意外にコツを覚えると自分の名前が簡単に書けるのでおもしろかったです。また機会があればやりたいと思ったし、今度は長い文を書いてみたいと思いました。この体験で分かったことを生かして目の見えない人を助けられるようにがんばりたいし、目の見えない人以外の困っている人も助けられるようにがんばりたいと思いました。」
「アイマスク体験では、階段を上るときと下りるときがもう一段あるのかなと思って足を下ろすと平らだったのが少し怖かったです。」
「家に帰った後、トイレや洗濯機など点字が書かれている場所で触ってみるとだいたいの感覚でちゃんと字を読むことができました。」
「私は心に残ったことが三つあります。一つ目はアイマスクをしながら階段を上がったり下がったりするのがとても怖かったです。目の見えない人は周りに何があるか分からないのに私たちと同じように生活しているというのがとても心に残りました。二つ目は点字の書き方です。6個の穴にどれだけ穴をあけるかで読み方が違ってくるのを初めて知りました。三つ目は人が止まったことや少し下にいることが相手の手の位置で分かることです。ペアの人が居ればとても安心するのがわかりました。私も体験をしてみてペアの人が『右へ曲がります』『階段これで最後です』と声を掛けてくれるととても安心で、『声かけって大事だなあ』と改めて思いました。」
「目の不自由な方はどんな思いで道を歩いているかや点字はどのようにして読んだり書いたりするのかがよく分かりました。アイマスク体験をする前に1人で目を閉じて歩いてみましたが、そのときとても怖いと感じました。しかし今回の体験でガイドの人が隣にいたときは、『なんだか安心できて歩きやすい』と感じました。このことから誰か1人がそばにいるかいないかで、目の不自由な方の不安も変わるのだと思いました。手助けの大切さを感じました。今回の体験で目の不自由な方への心持ちや手助けの大切さがよく分かりました。この経験を生かして、もし目の不自由な方が困っていたら手助けしてあげたいと思います。」
情報コーナー
将棋局面を点図データ出力するアプリ
将棋局面図の点図を自動的に作るアプリがほしいという要望を受け、将棋局面図の電子ファイル(KIF形式)を読み込むと、点図データを出力するWebアプリを新潟大学渡辺研究室で開発したそうです。
以下、紹介記事を引用します。
点図データは2種類で、そのうち1種類はEDEL形式ですので、点字プリンタ(ESA721)で印刷できます。
従来、視覚障害者がコンピュータ将棋を指すには、棋譜情報を音声で聞いて記憶をするか、点字ディスプレイ1行に棋譜1段分を表示し、それを上下させて盤面全体を想像するか、あるいはこれらの情報をもとに盲人用将棋盤の駒を配置するといった手法がありました。ここに、点図で棋譜を2次元的に確認するといった手法が加わりました。コンピュータ将棋をたしなんでいらっしゃる方で点字プリンタを使える方は、ぜひお試しになって下さい。
点字プリンタは持っていないので、点図を送ってほしいという要望があるようでしたら、まずは渡辺までご相談下さい。(t2.nabe@eng.niigata-u.ac.jp)
アプリの利用はこちらのアドレスからどうぞ。https://t-watanabe-lab.github.io/shogi.html
将棋以外にチェスの局面図も開発中です。こちらのプロジェクトにご協力戴ける方がいらっしゃいましたら、渡辺までご連絡下さい。
2月のヨーガ教室
日時:2月22日(水)10:00~12:00
会場:サポートセンターにじ2階 会議室
講師:日本ヨーガ療法学会 今村幸子先生
参加費:無料
参加希望の方は事前にお申し込みください。
短歌・俳句・川柳
柳沼友治さん(郡山市)
初詣巫女の姿の無き神社
谷津フク子さん(郡山市)
6人の兄弟揃えて新年会
谷田川正さん(郡山市)
干支の鶏背伸び羽ばたき時刻(とき)告げる
我は雄鳥今年もハッスル
矢島秀子さん(南相馬市)
出荷制限の憂き目にあうも潔し
雪を装う鈴なりの柿
穴沢勲さん(会津若松市)
新雪に濡れた指先ひんやりと
触ってなんぼの盲人社会
三浦寛さん(国見町)
今見ない赤いほっぺの児童(こども)たち
にぎわい忘れた通学路
宮崎英幸さん(福島市)
マニュアル化されし店員の応対に
人工知能を思ふたまゆら
お知らせ
●「会報にじ」が、次々号で300号を迎えます。そこで、「にじと私」をテーマに作品を募集いたします。エッセイ・感想文・短歌・俳句・川柳・コメントなんでも結構です。応募資格はこの「にじ」をお読みの方全員です。文章なら、墨字で原稿用紙2枚以内、点字では3ページ以内、短歌・俳句・川柳は、3作以内でお願いします。「会報にじ」に対する思い・感想などを多くの方がお寄せくださることを願っています。
●全ボランティアの交流会を行います。にじの会で活動していてもなかなか他の活動内容を知ることができません。この機会にお互いの活動内容を紹介し、交流を図りましょう。
日時:2月25日(土)13:00~15:00
会場:サポートセンターにじ2階会議室
●今年度のバザーの総売上は52万円になりました。アフターバザーとして12月いっぱい、センター内で販売したことが効果を上げました。おかげさまで対面音訳室のエアコンを新しくする余裕が生まれました。ご購入いただいた皆様、品物を提供してくださった皆様のご協力に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
●JRPS福島から「医療講演会&交流会」のお知らせが届いています。
日時:3月12日(日)10:00~
会場:郡山市ビックアイ 7階第一会議室
内容:
交流会(10:00~11:30)
講演会(13:00~14:30、受付12:30~)
講師:福島県立医科大学眼科学講座石龍鉄樹教授
演題:網膜色素変性症アップデート
参加費:無料
申し込み締切:2月20日(月)
申し込み・問合せ:090-2367-4816(穴沢さん)詳しくはお問い合わせください。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
坂下さんの 「私のおすすめ」
『真贋』今野敏著・・・日本の歴史を通読すると、大向こうをうならせるような大盗賊が散見されます。「石川や浜の真砂は尽くるとも世に盗人の種は尽くまじ」の辞世を残した石川五右衛門は安土桃山時代に暗躍した大盗賊です。天下を統一した豊臣秀吉が築き上げた名城・大阪城に秘術の限りを尽くして忍び込みましたが、あえなく捕らえられ釜ゆでにされたと言われます。
江戸時代には大名屋敷・大店を狙っては盗みを働き貧しい人々に金品をばらまいては義賊として江戸っ子の喝采を浴びた大盗賊鼠小僧次郎吉。
妻木(つまき)松吉(まつきち)は大正末年から昭和の初めにかけて、説教強盗として世間を大いに賑わせました。夜半盗みに入った家では、家族に「戸締まりはしっかりとしろ。犬を飼え」などと言い残して立ち去ったと言います。
昭和30、40年代。学生運動で荒れに荒れきっていた時期。ヘルメットをかぶり角材を振り回して機動隊を相手に暴れ回っていた面々は、教育的刑罰として数日警察署内留置場に留め置かれました。何人も収監されている中にやたらと貫禄のある、その世界では名の知れた大泥棒のじいさまがいたそうです。おっかない顔で事情を聞かれ正直に答えたところ「こちらの兄さんたちはこれから天下をかっぱらおうってえたいした仕事をなさっているんだ。てめえらのようなけちな悪党とは訳が違うんでえ。すっこんでろい」。たちまちの内にじいさまの隣に席が作られ大事にされましたが、内心は生きた心地もしなかったと言います。
日本の象徴・富士山、アメリカ合衆国サンフランシスコ湾の自由の女神、言葉巧みにアラブの大富豪に取り入っては舌先三寸で、これらを売り飛ばし世界をあっと言わせた詐欺師の存在。単純な暴力事件・衝動的な殺人事件とは異なり詐欺や盗み・スリ・贋作といった犯罪に手を染めるものたちは極めて頭脳明晰・微妙な心理の操作に優れ、さらにはたくみとさえいえる指先の秘術を会得しているものもいると言われます。
それらの犯罪を摘発し操作する警察にも高度に訓練された専門性が要求されます。捜査3課に属し日々知能戦を繰り広げる人々です。
今回取り上げました作品では、現在数点のみ残されている時価数千万から数億円はくだらないと言われる中国・宋時代に作陶された国宝・曜変(ようへん)天目(てんもく)が、厳重に管理されている美術館から東京都内のデパートの展覧会に特別出品されることになりました。
それとともに裏社会で不穏な噂が流れ始めます。天才的な贋作者により焼き上げられた曜変天目の偽物が存在し、展覧会と相前後し本物の国宝とすり替えられ国際的な密輸組織に流されるというのです。
本物と贋作を見分けるだけの厳しい目利き能力がなければ犯罪を阻止することなどできません。捜査3課の面々と犯罪者との間に息詰まるような神経戦が繰り広げられます。(音訳あり・点訳着手)